クワイエットルームにようこそ 特別版 (初回限定生産2枚組) [DVD]posted with amazlet at 12.03.13角川エンタテインメント (2008-03-19)
売り上げランキング: 10518
(2007年/日本)
監督:松尾スズキ
出演:内田有紀、蒼井優、宮藤官九郎、大竹しのぶ、りょう、妻夫木聡、庵野秀明、塚本晋也、平岩紙、中村優子、箕輪はるか、近藤春菜
個人的採点:80点/100点
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『クワエットルームへようこそ』は『松尾スズキ』の同名原作小説を『松尾スズキ』本人の脚本、監督によって映画化した作品である。
フリーライターの『佐倉明日香(内田有紀)』は真っ白い部屋で手足を拘束された状態で目覚める。締め切り間近の原稿を書けないでいた彼女はなぜか精神病院の閉鎖病棟の中にある『クワイエットルーム』と呼ばれる部屋にいたのだった。彼女は仕事の為にも普通とは思えない人々に囲まれた環境から早く抜け出したかったのだが・・・。
まず、キャスティングに関してはかなり良いと思う。まず『内田有紀』の存在感が物凄い。正直な所、個人的には『内田有紀』は女優と言うカテゴリの中になかった。実際に出演作をTVドラマ含め何一つ観た事がなかったので、この作品以外はCMでの彼女しか印象にない。しかしこの作品での彼女の存在感の凄まじさは何だろうか。『宮沢りえ』、『広末涼子』と同様の、年を重ねる毎の美しさを感じてしまう。それが元々持っていたものだったのか私生活の影響なのかはわからないが、今後が楽しみでならない。出来れば映画や舞台に多く出演してこの作品の様にある意味でエグい演技をして欲しいものである。また『宮藤官九郎』と『大竹しのぶ』の演技は観ていて面白かった。『宮藤官九郎』作品は好きではないのだが、出演者としての彼は意外と好きだ。ちなみに、他の感想文でも度々雰囲気女優と書いている『蒼井優』はこの作品では雰囲気女優ではなかった。かなりの努力を感じたが、正直な所、雰囲気女優の方が合っていると私は思う。
内容的には誰にでも薦められる作品ではないだろう。一見、コメディタッチなので気楽に観られる様な錯覚にも陥るが、実際はかなり強烈な作品である。心が病んでいる時に観るとダメージを負う類の作品でもあると思うので注意が必要だ。しかし、この作品にリアリティがある訳ではないし、それを求めるべき作品ではないだろう。精神病院の隔離病棟に入院させられるのも、周りの患者たちもあくまで舞台装置としてのものだと思う。「自分は正常だ」と思うことでバランスを保とうとしている人間をコメディで笑い、更に最後は突き落とす、という感覚に嫌悪感を感じなければハマれるのではないだろうか。
『イン・ザ・プール』にも通じることだが、自分の今の精神状態が非常に危ういバランスの上で成立していると認識させられる事への恐怖を感じさせられる作品だ。この作品に出てくる人物たちを「有り得ない」と笑い飛ばせる様な幸せな方は別にして、大抵の方が自分の心の奥底にある共通項をどこかしらに見付けられてしまうと思う。そういった意味でかなり観る人を選ぶ作品だろう。
『クワイエットルームへようこそ』はコメディ要素を期待して観ると大きなしっぺ返しをくらう作品である。好き嫌いは分かれるだろうが、かなりの良作であった。