2012年02月15日

ストレイト・ストーリー

ストレイト・ストーリー [DVD]
ポニーキャニオン (2004-01-21)
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(1999年/アメリカ・フランス)
監督:デヴィッド・リンチ
出演:リチャード・ファーンズワースシシー・スペイセク


個人的採点:85点/100点
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 『ストレイト・ストーリー』は『デヴィッド・リンチ』監督による老人がアメリカの大地をトラクターに乗って進むロードムービーである。

 アイオワ州に住む老人『アルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)』は娘の『ローズ(シシー・スペイセク)』と暮らしていた。彼は家の中で倒れても自力で立ち上がる事も出来なかったが、ウィスコンシン州に住む長年会っていなかった兄が倒れたと聞くと、周囲の人間が止めるのも聞かず1人トラクターで無謀な旅に出るのだった・・・。

 『デヴィッド・リンチ』と言うと『鬼才』と言うイメージがあり、実際にこの作品より前に観た『インランド・エンパイア』(2006年の作品)では何が何やら理解出来ない、と言う状態に陥ってしまった。しかしこの作品はそんな印象とは全く無縁で本当に同じ監督の作品なのだろうか、と思ってしまった程である。Wikipediaでも『デヴィッド・リンチ』の作品一覧の項にある『ストレイト・ストーリー』の部分には※付きで『他作品と作風の違う、全年齢指定で人情物の作品』とあるので、やはりこの作品は随分と毛色の違った作品なのだろう。しかし、だからこそこの様な作品も含めて幅広い作品を手掛けている『デヴィッド・リンチ』監督の作品をもっと観てみたいと思わされた作品になった。

 内容は非常にシンプルだ。淡々とした物語で驚きは何も起こらない。確かに眠くなる事もあるだろうが、そんなゆったりとしたムードが良いのだと思う。アメリカの広大な穀倉地帯をただひたすらに真っ直ぐと貫く道路は単純に美しく、またそこをゆっくりと進むトラクターは人生を思わせてくれる。映画にスリルや泣ける感動だけを求める方には合わないかも知れないが、ゆったりとした気持ちでこの作品を観た後に、コーヒーを飲んだり煙草を吸ったりと、人それぞれの方法でリラックスすると、きっと人生を豊かにしてくれるのではないだろうか。

 ところで『アルヴィン・ストレイト』老人が作品の中で交通事故にあった鹿の肉を食べるシーンがある。彼は薪を拾うのにマジックハンドを使うほどに腰が悪いという事になっているのだが、実際に解体しているシーンがある訳ではないものの、状況としてはもちろん本人が一人で解体したとしか考えられないので実はかなり元気なのでは?と疑問に思ってしまったのはここだけの話である。それにしても鹿との交通事故を起こしてしまった女性の様な人はどこの世界にもいるんだな、と思わされた。不幸を引き寄せると言ったら大袈裟かも知れないけれども、なぜか不運としか言い様のない出来事を起こす人がいるが(そして私もどちらかと言うとそちら側の人間だが)、そういう人は作品に登場する女性の様に段々と卑屈になっていく。そしてそれが負の連鎖を呼ぶのだと思う。見知らぬ老人である『アルヴィン・ストレイト』に喚き、ふと鹿がどこから来たのかを不思議に思って周囲を見回した女性は負の連鎖を断ち切れただろうか。

 主演の『リチャード・ファーンズワース』はこの作品の上映された翌年の2000年に自殺している。癌を患っていたという事だが、そんな苦しみの中でこんなにも素敵な作品を遺していってくれた事を感謝したい。

 『ストレイト・ストーリー』はシンプルなストーリーながらも、そこに人生を感じられるとても素敵な作品であった。ゆったりとした気持ちになりたい人にはオススメしたい名作である。


(追記)映画を基にした本を読んで読書感想文の様なモノを書いてみた。

『ストレイト・ストーリー : 村上龍』 − 思考の消化器官





posted by downist at 21:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 洋画 − ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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