雪に願うこと プレミアム・エディション [DVD]posted with amazlet at 12.03.09ジェネオン エンタテインメント (2006-11-10)
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(2005年/日本)
監督:根岸吉太郎
出演:伊勢谷友介、佐藤浩市、小泉今日子、吹石一恵、香川照之、小澤征悦、椎名桔平、津川雅彦、山崎努
個人的採点:85点/100点
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『雪に願うこと』は『鳴海章』の原作小説『輓馬』を『根岸吉太郎』監督が映画化した作品である。
東京で事業に失敗した『学(伊勢谷友介)』は全てを失い、故郷である北海道の帯広に帰って来た。故郷では兄の『威夫(佐藤浩市)』が細々と『ばんえい競馬』の厩舎をひらいており、そこでは人と馬が力強く精一杯生きていたのだった・・・。
『輓馬』でソリを引き障害を越えて行く『ばんえい競走』という種の競馬をテーマにした作品であるが、この作品を観なければきっと『輓馬』という馬も『ばんえい競走』という競馬も知らずにいたに違いない。そもそも私は競馬自体をそれ程知らないのだが、中央競馬を知っている方でもこの『ばんえい競走』を知っている方はそう多くはないのではないだろうか。サラブレッドたちが青い芝の上を駆けて行くのは、観ていて非常に美しいと思う。馬券を一度も買ったことがない自分でもついついTVで見入ってしまうことがある程だ。この作品の『ばんえい競走』で走っている『輓馬』はそんなサラブレッドたちとは随分と違うけれども、しかしその力強さはサラブレッドたちが駆ける姿とはまた一味違った美しさを見せてくれるのだ。暗闇の中、白い息を吐きながら輓馬たちが走っている姿は本当に美しく、その姿を観るためだけでもこの作品を観る価値があると思う。
ストーリー的にはよくある設定だとは思うが、この作品に関してはキャストの演技力も手伝ってか奇を照らってない落ち着いた印象を与えており、それが物語により引き込ませてくれている。素質はあったものの、なかなか結果を出せず引退することになっていた『ウンリュウ』の復活は観ていても上手くいき過ぎだろう、と思ってしまうのだが『学』が立ち向かう将来を考えれば、それも致し方ないことなのかも知れない。逆に『ウンリュウ』の復活を危うく描いていたら物語が非常に重苦しくなっていたことだろうと思う。
キャストはかなり良かったのではないだろうか。最初は『学』役の『伊勢谷友介』と騎手役の『吹石一恵』は、『学』が東京で(失敗はしたものの)事業をおこしていて、騎手が勝負の世界で生きている割には少し弱いかなと思わなくもなかったが、特に『学』役の『伊勢谷友介』はその弱さが兄の『威夫』役の『佐藤浩市』の力強さと時折見せる弟への優しさを引き立たせていた様にも感じられたので、観終わった時には納得のキャスティングであった。
また『小泉今日子』が厩舎の賄い婦役なのだが、相変わらず綺麗である。撮影時は40歳手前くらいだったはずだが年齢を重ねても、いやむしろ年齢を重ねるほどに美しいなあ、と思わずにはいられなかった。女性ではあるが、彼女の様な年齢の重ね方には憧れてしまう。
『雪に願うこと』は闇夜に浮かぶ雪と力強い輓馬とその吐く白い息のシルエットが非常に美しい素敵な作品であった。第18回東京国際映画祭で四冠を獲得したというのも納得の秀作である。
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