(2007年/日本)
監督:堤幸彦
出演:柳楽優弥、石原さとみ、田中圭、貫地谷しほり、関めぐみ、佐藤千亜妃
個人的採点:50点/100点
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『包帯クラブ』は『天童荒太』の原作小説を『堤幸彦』監督が映画化した作品である。
両親の離婚で傷付いている『ワラ(石原さとみ)』はある日、病院の屋上で『ディノ(柳楽優弥)』と出会う。初対面の『ディノ』の態度に苛立つ『ワラ』だったが、『ディノ』が心の傷付いた場所に包帯を巻くという行為に心を動かされる。後日、『シオ(貫地谷しほり)』、『ギモ(田中圭)』、『リスキ(佐藤千亜妃)』も加わり『包帯クラブ』として街の傷付いた人々の傷付いた場所に包帯を巻いて行くのだが・・・。
ストーリーとしては心の傷を治すために包帯を巻いていく、と言う設定はともかく、『ディノ』以外の登場人物の悩みは世の中には結構よくある種のもので、小説や映画でも決して目新しいものではない。それでもこの作品が魅力的なのは、悩みや傷を抱える『ワラ』たちが、その『包帯クラブ』の活動を半信半疑ながら頼ってくる人々を癒すために包帯を色々な所に巻くと言う活動を通して、実はメンバーが自分たち自身を癒している、と言うことが明確に表現されているからなのだと思う。また街中に包帯を巻いていく、というポジティブな活動の反面、その癒しは非常に柔らかなもので、包帯がそうである様に傷が治るまでの間に傷口を守る為の物でしかない。傷を治すのはあくまで自分自身であり、包帯はその傷が治るのを包み込んでいるに過ぎない、と言うことがわかり易く表現されているのだと思う。大人になると気恥ずかしさも手伝って、そういったわかり易い表現は敬遠してしまいがちになるのだけれども、小難しい説教よりも素敵な表現だと私は思う (好きなのは残念ながら小難しい説教なのだが・・・)。
キャストは皆、若いけれどもパワーがあって非常に好感がもてた。ただ、演出がどうも過剰だった気がしてならない。もう少し控え目にしておいても十分伝わってくるものが、このキャスト(特に『柳楽優弥』と『石原さとみ』)だったらきっとあったはずだと思う。特に『柳楽優弥』演じる『ディノ』のエキセントリック過ぎる演出には気持ちの悪さすら感じてしまった。そしてまた、エキセントリックさを強調したいのであれば、それを貫いて欲しかったのだが、ラストシーン(エンドロール後)で妙に安全な着地を目指した様に見えるカットを入れたのが、余計に気持ちの悪さを感じさせられてしまった。エンディングは余りにも安っぽ過ぎる。個人的にはそのシーンがあった為にかなり評価を下げてしまった作品で、非常に残念である。
映像は特にラストの高層ビルの屋上に包帯を巻き付けるシーンは美しかったと思う。個人的には音楽がイマイチ煩く感じてしまったのと、前述した『ディノ』の演出が過剰だったことが残念だったのだが、それでも魅力的なシーンだったと思う。ただ全編を通して、包帯を街の至る所に巻くということを余りアート的に表現したくなかったのかな、という様な映像が多かったと思う。恐らく、撮ろうとすればもっとアート的に美しい映像を撮れたのだろうが、敢えてそれをしていなかったのではないだろうか、と思う。そこは好き嫌いの分かれそうな所だが、個人的にはとても良いバランスだと感じた。
ところで男性諸氏には、作品の中で『石原さとみ』が「ドンマイ!!」とカメラの前でポーズを撮ってくれるシーンがとにかく堪らないと思う。中学、高校時代の部活に彼女の様なマネージャーがいたら、きっと恋をしてしまうに違いない。『石原さとみ』が好きな方はそのシーンだけの為に観ても損はしないだろう。個人的には『Jam Films S』の『すべり台』から2年でこんなに変わるのだなあ、と思うと何とも感慨深い。
『包帯クラブ』は中学、高校生くらいの今が青春!という方に観て頂きたい作品であった。若さを失った大人には、残念ながら退屈な作品なのではないだろうか。
(追記)原作本を読んで読書感想文の様なモノを書いてみた。
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