ノー・マンズ・ランド [DVD]posted with amazlet at 12.03.09ポニーキャニオン (2002-12-18)
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(2001年/フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロヴェニア)
監督:ダニス・ダノヴィッチ
出演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、カトリン・カートリッジ
個人的採点:75点/100点
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舞台はボスニア軍とセルビア軍の前線にある無人地帯(ノー・マンズ・ランド)。ある霧の夜、ボスニア軍の交代要員たちは無人地帯のセルビア軍寄りに迷い込んでしまい夜が明ける。夜が明けた途端にセルビア軍からの一斉射撃を受けながらも、『チキ(ブランコ・ジュリッチ)』だけは負傷しながらも塹壕に吹き飛ばされて生きていた。そこに2人のセルビア兵が偵察にやってきたのだった・・・。
『No Man's Land』は戦争映画と言えども作品ではほとんどが塹壕内のシーンであり、派手な戦闘シーンがある訳ではない。しかし、それだからこそ戦争と人間の本性の様なものが浮き彫りになっていると思う。むしろ戦闘シーンがないからこそ戦争と人間の残酷さを観せ付けられる作品になっているのではないだろうか。また、そこに関心を寄せる人間たちの身勝手な醜さも表現されており、日本でニュースを眺めている自分を振り返ってしまうのである。作品は確かにシンプルでシーンを多くはないが、その中にこの世界の争いと人間の残酷さと醜さと滑稽さを詰め込んだのがこの作品なのだろう。
作品では塹壕に残った『チキ』たちを救出するために国連軍が現場の独断で出動し、それをジャーナリストが追いかけるのだが、そのどちらも塹壕にいる『チキ』たちと満足に会話も出来ない。しかし、塹壕にいた戦争の当事者同士であるボスニア、セルビア両兵は問題なく会話出来るどころか、共通の知人すらいるのである。そんな人間同士が塹壕の中で会話をする事で親近感を感じながらも許せない、そしてお互いを傷付けることで物語は悲劇的な終焉へと向かっていくのだ。これは何度観ても胸が痛くなる。
ところでこの作品に女性ジャーナリスト役で出演している『カトリン・カートリッジ』は作品が公開された翌年(2002年)に亡くなっているのを、今回Wikipediaを見て初めて知った。この作品でしか観た事がない女優ではあったが、41歳の若さということで残念である。
『No Man's Land』は皮肉が込められた静かで心に苦く響く良作であった。時間も98分と短く、画としては残虐なシーンはないので気軽に観て欲しい作品である。