(2005年・韓国)
監督:パク・クァンヒョン
出演:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・ヘジョン、イム・ハリョン、ソ・ジェギョン
個人的採点:80点/100点
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『パク・クァンヒョン』監督による朝鮮戦争を舞台にしたファンタジー作品である。
舞台は朝鮮戦争時、連合軍の仁川上陸後の『トルマッコル』と言う山奥にある幻想的な理想郷とも言える村である。激しい戦争の最中、この村の人々は戦争の事を知らなかった。そんな村に南北朝鮮軍の兵士や国連軍のアメリカ人兵士が偶然にも居合わせる事になった。初めのうちは敵対していた両者だったが、村で生活するうちに徐々にお互いの敵対心がなくなっていく。しかし、戦争の足音は理想郷とも言えるこの村にも訪れたのだった・・・。
ファンタジー要素の強い作品である。舞台設定も朝鮮戦争となっているが、あまりその辺りの事を考えて観ない方が良いだろう。ジブリアニメの実写版と言う様な感覚で観るのが良いと思う。ジブリ作品と同様に『久石譲』の音楽が幻想的な世界観を更に盛り上げている。また、私自身がそれ程韓国映画・ドラマを観ないのであまり良く知らない役者陣だったのだが、魅力的な役者揃いだったと思う。特に村人役での『カン・ヘジョン』は設定はイマイチだったと思うが演技は素晴らしかった。彼女の素晴らしい演技を活かす様な設定が何かあったのではないだろうか、と思うと残念だ。
この作品は反戦を訴えた作品だと思うが、幻想的なトンマッコルを守るために立ち上がった人間が(映画の中にもかかわらず)結局は兵器を使ってでしか、村を守る術を考えられなかったと言う点が作品というよりは現代の人間の抱える問題点なのかもしれない。非現実的でも映画の中では現実を越えた解決策を想像させて欲しかったと思う。そして、その結末が最初から用意されていた様な展開が本当に反戦映画なのだろうか、と心のどこかに引っかかってしまう部分を作っているのも事実であった。しかし私自身、その結末以外を想像出来るかと問われると、やはり難しいと思え、自分の貧しい想像力に悲しくなってしまった。
『トンマッコル=子供みたいに純粋な村』と言う事だが、この作品を観て子供みたいな純粋さでは生き残れない、と感じられてしまうのだとしたら、それは物凄く悲しい事だと思う。この作品の結末からは、トンマッコルがこの後も理想郷でいられたとは思えなかった。しかし、理想郷が理想郷である事を認める事が出来ない世界は結局のところ、純粋さをもった人間をそのままでは認める事が出来ない世界と同じ様に思える。理想郷を信じる事が出来る純粋さを持った作品に出会ってみたいと思わされた。
『トンマッコルへようこそ』は美しいファンタジー作品であった。ただ反戦映画と言う側面から見ると気になってしまう部分が人によっては出てくるかもしれない。
関連リンク
・『オールド・ボーイ プレミアム・エディション』
・『シルミド / SILMIDO』