2010年09月16日

チョコレート(MONSTER'S BALL)

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(2001年/アメリカ)
監督:マーク・フォースター
出演:ハル・ベリービリー・ボブ・ソーントンヒース・レジャーピーター・ボイル

個人的採点:65点/100点
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 『マーク・フォースター』監督による『ハル・ベリー』主演の社会問題をベースにした人間ドラマの作品である。

 舞台はアメリカ南部(時代は1990年代中頃だろうか)、『ハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)』は死刑囚棟の看守だった。彼の父『バック(ピーター・ボイル)』も同じ看守であり、また息子の『ソニー(ヒース・レジャー)』も看守であった。そして、『ハンク』と『バック』は人種差別主義者だった。黒人の囚人『ローレンス(ショーン・コムズ)』に対する処刑の際、『ハンク』と『ソニー』が電気椅子に向かう『ローレンス』に付き添ったが、『ソニー』は直前に取り乱してしまい『ハンク』の叱責を受け、後に拳銃自殺をしてしまう。また、『ローレンス』の死により一人で息子の『タイレル(コロンジ・カルフーン)』を育てていた『レティシア(ハル・ベリー)』だったが、ある時『タイレル』を交通事故によって失ってしまう。その事故の際に病院まで運んだ『ハンク』と『レティシア』は徐々に惹かれ合うのだが・・・。

 主演女優である『ハル・ベリー』はこの作品でアカデミー賞の主演女優賞を受賞していると言う事で、納得の演技である。また、『ビリー・ボブ・ソーントン』も渋い演技を見せてくれている。そして、『ヒース・レジャー』だが、これ程の魅力的な演技をする人が28歳と言う若さで亡くなってしまう事が残念で仕方がない。この作品当時は21歳くらいだろうか。30年後の彼の演技を観てみたかったものである。ともあれ、彼らを始め出演者陣の演技は素晴らしかった。

 貧困・死刑制度・人種差別・銃社会・高齢者福祉・肥満・母子家庭、そして全ての人間の抱える孤独・・・良くここまでの社会問題と言うべき不幸を詰め込んだな、と思ってしまう。主題は恐らく人種差別となるのだろうが、どの問題も大き過ぎて扱い切れてない印象である。もちろん上に挙げた社会問題は一つ一つと言うよりも、全てがリンクしていってしまって大きくなるからこそ、社会問題になる。しかし、それを2時間にも満たない映画の中で、全て抱え込んでしまったのでは、その気概は評価に値すると思うが、結局は消化不良をおこしてしまっている様に感じられてしまうのである。この作品がそれらの社会問題の問題提起や解決を考えている、とは私も思ってはいない。しかしだからこそ、ここまで問題を見せ付けられてしまうと、希望よりも圧倒的な悲しみが残ってしまうのである。

 さて、この作品の邦題は『チョコレート』であるが、原題は『MONSTER'S BALL』である。この原題については作品内でも『ハンク』の口から語られるのだが『死刑の執行前に看守達が行う宴会』の事だそうだ。この作品の感想、レビュー、批評などの文章にはこの点がほとんど必ずといって良い程に語られているが、やはり私もこの原題と邦題の乖離には違和感を感じた。ただ、『チョコレート(アイスクリーム)』がこの作品に残す印象は確かにかなり大きいのである。原題である『MONSTER'S BALL』がどうして付けられたのかは、もちろん私の知るところではないが、この原題から感じる結末は死刑と言う悲惨な結果にしか結び付いていかない。作品のラストシーンでは『ハンク』が『ローレンス』の死刑執行に関わった事を知った『レティシア』と『ハンク』が星空の下でチョコレート・アイスクリームを食べるのだが、この時の『レティシア』の表情からは明確な希望を感じる事は出来なかった。むしろ、原題を考えると、そのシーンこそが『MONSTER'S BALL』である様かにも思えてしまったのである。反対に邦題である『チョコレート』を作品の題として考えると、苦さと甘さが溶け合わさった未来を感じる事が出来るのだ。恐らく、チョコレートには肌の色もかかっているのだろう。その邦題の上手さは確かにわかるのだが、個人的には邦題を付けた人間のしたり顔を感じてしまった。上手い邦題であった事は確かなのだが、個人的には好きになれない種の邦題であった。

 『チョコレート』は現代の社会問題が色々と詰め込まれた作品であった。気軽に観る事の出来る作品ではないが、ビターチョコレートの様なほろ苦い後味の残る佳作だと思う。



関連リンク
アメリカ合衆国における死刑 (Wikipedia)
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・『君のためなら千回でも

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posted by downist at 02:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 洋画 − ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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