2010年09月09日

歩いても 歩いても

歩いても歩いても [DVD]
バンダイビジュアル (2009-01-23)
売り上げランキング: 12997

(2007年/日本)
監督:是枝裕和
出演:阿部寛夏川結衣YOU高橋和也田中祥平樹木希林原田芳雄

個人的採点:75点/100点
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 『是枝裕和』監督による『阿部寛』主演の極めて日本的な家族ドラマ作品である。

 夏の終わりに『横山良多(阿部寛)』は妻『ゆかり(夏川結衣)』と息子『あつし(田中祥平)』を連れて帰省した。しかし、開業医だった父『恭平(原田芳雄)』とは折り合いが悪く、気が進まない帰省でもあった。その日は『良多』の兄である長男の15回目の命日で、横山家には普段ない顔が揃ったのだが・・・。

 この作品は撮影の舞台が地元近くだった事が印象に残っている理由かも知れない。作品の中で流れる空気が普段自分が感じているものと近いのだろう、横山家が非常に現実的なものとして見えたのである(設定としても別に珍しい家族像ではないのだが)。坂が多く、高台から海が見え、その手前を京急が走り、都会から決して遠くはないが老人の多い町。きっと日本中に似た町がたくさんあると思うのだが、やはり自分の良く知っている町で起こっている(様に描かれている)事には想いを馳せ易いのである。

 出演陣は『YOU』も含め全員良かったと思う。ただ、その中でも『樹木希林』は別格であった。彼女の演技は個人的には色が強過ぎて疲れてしまう事が少なくないのだが、この作品に関しては素直に迫力を感じる事が出来た。『樹木希林』演じる『とし子』が長兄の死、夫の浮気、日々の鬱積した感情を爆発させない様に少しずつ吐き出していく様は女性の恐ろしさと強さを嫌と言う程に感じさせられた。その『とし子』に対する『ちなみ(良多の姉)』を演じる『YOU』と『ゆかり』を演じる『夏川結衣』もそれぞれの持ち味を出した好演だったと思う。

 個人的には『阿部寛』のナレーション以降のラストシーンは必要なかった様に思う。「いつもこうなんだよな。ちょっと間に合わないんだ」と言う『良多』の台詞で終わって良かった様に思うのだ。その台詞にはそれから後も親孝行したくても結局大した事が出来ないだろう、と言う予言が、そしてそのバス内での会話から『良多』と『ゆかり』の夫婦は今後も上手くやっていけるだろう、と言う展望がしっかりとみえてくるからである。また、黄色い蝶の件もいまいちを必要を感じなかった。

 家族、そして人生は苦いものだ。しかし、それも含めて素晴らしいものでもある。『恭平』が「この家は俺が働いて建てたんだぞ。なのに何でおばあちゃん家なんだ」というのも家族だからこそ言える事だろう。私の家族もきっと色々な事を抱えて生きているのだろうけど、自分は受け止める事が出来ているだろうか、と考えてしまった。きっとどんなに頑張っても「ちょっと間に合わない」事になるのだろうけれども、少しでも捌け口にならないといけないな、と思わされてしまったのだった。

 『歩いても 歩いても』は正統派日本映画と言える様な作品であった。苦味が美味しいと言える様な、文学小説が好きな方にはお薦めである。

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posted by downist at 22:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 − ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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