2010年09月08日

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ [DVD]
アミューズソフトエンタテインメント (2008-02-22)
売り上げランキング: 36759

(2007年/日本)
監督:吉田大八
出演:佐藤江梨子佐津川愛美永作博美永瀬正敏

個人的採点:85点/100点
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 『本谷有希子』による同名舞台劇を『吉田大八』監督が『佐藤江梨子』主演で映画化した作品である。

 両親の訃報を受け、東京から戻った『香澄(佐藤江梨子)』、母の連れ子だった兄の『穴道(永瀬正敏)』、その嫁の『待子(永作博美)』、そして妹の『清深(佐津川愛美)』という和合家。『香澄』は女優を目指し家族の反対を押し切って上京したものの、その性格が災いし女優活動が上手くいっていなかった。そんな『香澄』が帰省した事で今まで溜まっていた問題が吹き出していく・・・・。

 オープニングの『永作博美』のゴロゴロで持って行かれた作品である。作品のストーリーや出演者陣の演技、どれも私の好みであった。『永作博美』と『永瀬正敏』はさすがの好演だった。『佐津川愛美』の出演作は今作しか観た事がないが、他の作品も是非観てみたいと思える内容であった。そして、『佐藤江梨子』だが、これは演技どうこうではなく完全にキャスティングの勝利だろう。他の作品でこの作品の様に輝けるとは思えないが、少なくともこの作品では最高に輝いていた。また『香澄』が文通していた相手の『小森哲生』を明和電気の『土佐信道』が演じているのも観逃せない。終盤の『小森哲生』の頭が割れて『清深』が出てくるシーンには笑わされてしまった。

 この作品の登場人物たちはなかなか病んでいる様に見えるが、個人的には誰しも言葉や行動には出さないものの、心の中に抱えている種類のものの様な気がする。ただ、『待子』の普段の笑顔の底にあるものはどうだろうか。彼女が奇妙な歌を唄いながら作る数々の人形は彼女の心の闇の深さを感じてしまう。その闇はきっと新橋駅のコインロッカーの中に通じているに違いない。そう言った意味でも、『待子』が一番恐ろしいと思うのだ。そんな彼女は、あの後どの様に和合家で生活していくのだろうか。

 作品全体に散りばめらている『清深』の漫画が良い味を出している。個人的には映画に絵を挿む表現はそれ程好きではないのだが、この作品に関しては非常に良いアクセントになっていると思う。特にラスト直前のシーンにはかなりの迫力を感じた。ただ、個人的にはラストは着地してしまった感じがして、綺麗ではあったが物足りなかった。この作品にはもう少しブッ飛んで終わって欲しかったと思うのである。原作ではそのラストが若干違う様なので、そちらも是非読んでみたい。ところで、『穴道』はどうしてあのタイミングで、死を選択をしたのだろうか。登場人物の誰にも悲しまれていない様に見える死に何の意味があったのだろうか。結果として、『待子』が物語の中心になってしまう様にも見える『穴道』の死に、私にはあまり意味を見出せずにモヤモヤとした気持ちになってしまった。

 『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』はホラー要素のあるブラックなコメディ作品であった。誰にでも薦められる作品ではないが、ブラックなものが好きな人には是非お薦めしたい作品である。


(追記)原作本を読んで読書感想文の様なモノを書いてみた。

『『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ : 本谷 有希子』 − 思考の消化器官






関連リンク
・『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

  • 作者: 本谷 有希子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: 文庫



・『クヒオ大佐

クヒオ大佐 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD





posted by downist at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 − コメディ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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