(2000年・ドイツ)
監督:ファティ・アキン
出演:モーリッツ・ブライプトロイ、クリスティアーネ・パウル、マフメット・クルトゥルス、イディル・ユネル、ブランカ・カティッチ
個人的採点:70点/100点
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『ファティ・アキン』監督による恋愛ロードムービーである。
日蝕の中、何もないブルガリアの平野で『ダニエル(モーリッツ・ブライプトロイ)』は怪しげな男『イザ(マフメット・クルトゥルス)』の車をヒッチハイクする。車中で『ダニエル』はある女性を追ってトルコへ向かっている事や自分にこれまで起きた事を語り始める・・・。
ドイツ映画は日本人にとって余り馴染みがないと思うが、この作品を始めとして多くの作品が日本人の好みに良く合うと思う。(とは言っても私自身ドイツ映画は『ベルリン・天使の詩』、『ラン・ローラ・ラン』、『バンディッツ』、『グッバイ・レーニン』、『また、私たちは愛に帰る』くらいしか恐らくは観た事がないのだが)そして、ロードムービーは比較的人生を語る作品が多いので、合わないと眠くなるケースがあるが、この作品は恋愛話なので気楽に楽しく観ることが出来るのではないだろうか。主役の『ダニエル』が日本人男性に多そうな、いわゆる『草食系男子』と言っても良い男性である事も観ていて感情移入し易い理由かもしれない。
作中に魅力的なキャラクターが多い作品だと思う。しかし、主人公である『ダニエル』に一番魅力を感じなかったのは私だけであろうか。『ユーリ(クリスティアーネ・パウル)』が良く見かけるだけの『ダニエル』に恋をした理由が私には理解出来なかった。ただそれ故に、『ユーリ』の健気さが際立っていた様には感じられた。ちなみにどうでも良い話だが、『ユーリ』、『メレク(イディル・ユネル)』、『ルナ(ブランカ・カティッチ)』の三人の女性の中では、私は『ルナ』が一番好みである。また、脇役のキャラクターも魅力的だ。『ユーリ』をわざと襲う『レオ』や序盤に出てくるビールを奢ってくれる男性など、『根は良い人』の典型の様な人々が作品の魅力を引き立てている様に思える。ビールを奢ってくれる男性の「人生の喜びは無料だよ」と言う台詞には何故だか感動してしまった。
ストーリーとしては目新しい事は何もない。しかし、古臭くは感じないのは馴染みの薄いドイツ映画の為か、はたまたトルコ系の監督の作品が醸し出すトルコ的な匂い、音楽の為か。目新しくない点が逆に安心感に感じられる作品である。全体的にもう少しテンションが高かった方が好みなのだが、この作品はどちらかと言うとゆったりとした気持ちで観る作品である。
ラストシーンの台詞は日本人が言っても似合いそうにないが、不思議と格好良く聞こえてしまう。ここに引用しておこう。
『いとしい人 僕は何千キロも遠くから 幾つもの川を渡り山を越えて来た 苦しみやつらさに耐え 誘惑に打ち勝ち太陽を追って旅をした 君の前に立ち想いを告げるために 愛してる』私がこの台詞を使う機会はなさそうだが、シーンさえ見極めればなかなか感動出来る台詞な気がする。また、個人的にラストシーンのカメラワークは盛り上がる感じで好みである。
『太陽に恋して(IN JULY)』は夏に恋と旅をしたい方にお勧めの作品であった。恋と旅が人生を豊かにしてくれるのは間違いないのだ。
関連リンク
・『そして、私たちは愛に帰る』
・『ラン・ローラ・ラン』