映画の消化器官: オーシャンズ

2010年08月11日

オーシャンズ

オーシャンズコレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
posted with amazlet at 12.03.10
Happinet(SB)(D) (2010-07-09)
売り上げランキング: 3406
Amazon.co.jp で詳細を見る

(2009年/フランス)
監督：ジャック・ペラン
出演：ジャック・ペラン、ランスロ・ペラン

個人的採点：60点/100点
DMMでレンタルする
　『WATARIDORI』の『ジャック・ペラン』監督による、海の生物をテーマとしたドキュメンタリー映画である。（この作品を『ドキュメンタリー』で括るのを否定する方がいるのは理解出来る）

　この手の作品も随分と数が増えているので、全編を通して目新しいと思えるシーンは少ないだろう。私自身もそう感じたのは事実だ。しかしその自然の美しさ、映像の美しさが与える感動が少ない、と言う訳ではない。何度観ても自然の美しさは変わらないし、技術が進むと共に映像の美しさが増しているのは間違いない。この点だけでも観るに値する作品だと思う。

　この作品が劇場公開されていた時に、作品内で『アニマトロニクス』が使われていると言う事を聞いた覚えがあったので、注意しながら観ていた。だが観ていた時にはわからず、観終わった時に考えて思い付いた。『アニマトロニクス』が使われているシーンは冷静に観ていられなかった事が観逃した原因だろう。それ程に感情を揺さぶられるシーンであったし、メッセージ性に富んだシーンであった。ちなみに個人的にはメッセージが込められた作品の方が好みである。中立である事だけを考えられた作品は面白くない。そういった点ではこの作品はわかり易く立場を表明していたのではないだろうか。（それが多くの日本人の共感を呼ぶかどうかは別問題だ）主義や主張を感じる事が嫌なのならば、映画に限らず本も音楽も、芸術と言う枠組みにあるモノには触れずに生活すれば良い。

　日本語音声にしながらオリジナル音声の日本語字幕を出すと、その違いが随分とある事に驚く。日本語音声のナレーションは『宮沢りえ』である。聞き易い声で、声自体には好感をもてたのだが、オリジナルに比べると語り過ぎにも感じる。ただ、日本語音声では生き物の名前を全てではないものの挙げてくれるが、オリジナルではほとんど名前も説明もない。そして、その割にはオフィシャルサイトには登場した生き物の写真も名前も載っていない。映画と言う作品の中で全てを語るのは時間的にも内容的にも不可能だとは思う。しかしそうだとしたら、そのフォローはきちんとすべきだとも思う。Blu-ray版はどうだかわからないが、少なくともレンタル版のDVDには特典映像としても入っていなかった。特典映像としてはTVCMがいくつかと、『デジタルフォトギャラリー』が入っていたが。今観ているのだからTVCMなどはどうでも良いし、映像から抜き出しただけの写真にも魅力を感じなかった。ディスクにそれを入れられるだけの容量が残っていたのなら、登場した生き物の写真とその名前、基本情報くらいは提示してあっても良かったのではないだろうか。そうでなければ、作品の示したメッセージから行動を移すことが難しく、それは監督の考えたこの作品の役割からはほど遠い様に思える。

　さて、個人的に気になったシーンを挙げてみる。それは、嵐の中での漁船のシーンである。あの嵐の中で船は沈まないものか、と驚かざるを得なかった。また、あのシーンをどうやって空撮したのかも気になってしまった。（あの嵐であればヘリコプターからの空撮も難しいと思うのだが、さすがにあのシーンもCGでした、とかはないだろう）

　『オーシャンズ』は美しい自然を美しい映像で観せてくれる作品であった。最後に、個人的にはこの作品の主張には単純には共感出来なかった事を記しておく。