2010年08月06日

トウキョウソナタ

トウキョウソナタ [DVD]
メディアファクトリー (2009-04-24)
売り上げランキング: 9555

(2008年/日本・オランダ・香港)
監督:黒沢清
出演:小泉今日子香川照之小柳友井川遥津田寛治児嶋一哉役所広司

個人的採点:65点/100点
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 『黒沢清』監督による、『小泉今日子』、『香川照之』などが出演する家族ドラマ作品である。

 父・佐々木竜平(香川照之)はある日、会社をリストラされてしまい、その事を家族に打ち明けられないでいる。母・恵(小泉今日子)は普通の主婦であり続けようとしている。長男・貴(小柳友)は米軍の外国人部隊に入隊志望する。次男・健二(井之脇海)は学校の給食費を使ってピアノを習い始める。バラバラだった家族4人は破滅に向かって走り出して行ってしまう様に見えるが・・・。

 まず、この映画はラストシーンが撮りたかったのだろうか、と思える作品であった。健二が『ドビュッシー』の『月の光』を弾くラストシーンなのだが、それは音楽も合わさり非常に美しいシーンだった。個人的にはピアノの『YAMAHA』の文字が邪魔だな、と思ったのだけれども。(あんなに横にありましたっけ?)
また、この『月の光』と言うのがタイトルからして良かったと思う。この家族はエンディングで一つ山を越えた様に見えるが、そこに射しているのはあくまで淡い『月の光』に過ぎないのだ。問題は何も解決していない。竜平はまた清掃員の日々で、恵はドーナツを作り続けるのを止められるかわからず、貴はアメリカに渡ったままで、健二は果たしてピアノの才能が開花するかわからない。全てが不確定のままだが、止まっていた時間がまた動き出したのは事実だろう。それを『月の光』で淡い希望としていたのではないだろうか。このエンディングからエンドロールまでは是非観て頂きたいと思う。

 出演者の内、特に『小泉今日子』、『香川照之』の演技は非常にレベルが高かったのではないだろうか。『香川照之』は本当に素晴らしい役者だ。作品全体がイマイチだとしても、彼の役だけは締まっていると言う作品は少なくない様に思う。『小泉今日子』も特に夜の海でのシーンの美しさは際立っていた。ちなみに、私は『小泉今日子』目当てでこの作品を観たのだが、大満足である。しかし、強盗役として出演した『役所広司』だが、彼だけはこの作品の中ではミスキャストだったと思えてしまう。あえて現実感の無さ(強盗の出現から海までのシーン)を強調する選択だったとしても、納得が出来ない。どうしてもコメディになってしまっている様にしか感じられないのだ。強盗のシーンでの『笑い』は求めていないはずだが、どうしても笑えてしまった。『役所広司』自体は素晴らしい役者だと思うだけに、この配役は残念に感じられてしまった。

 この作品はリアルな様でリアルでない。それが『トウキョウ』というカタカナのタイトルに現れているのだと思う。しかし、リアルは既に映画の枠を超えてしまっているだろう。リストラされる父は世間に溢れているし、給食費の未納などは親が率先して行っている社会問題でもある。無理心中も比較的良く目に付くニュースである。米軍に入隊する長男は現実的でないか、と言うとそれも将来わからない。国防の問題とは関係のない所で、単純に仕事として米軍への入隊を希望せざる得ない未来が遠くない将来にあるかもしれない。これは映画なので、家族がバラバラに一晩を過ごした事で淡いけれども希望の光が射してきた。しかし、現実はそんなに甘くはない。それは観ている人みんなが感じている事だろう。それに対して評価は分かれそうな所だと思うが、私は映画はこの位でちょうど良いと思う。現実を見せられても苦しいだけだ。映画の中では現実を少し離れる位がちょうど良いのだ。

 ところで、『竜平』の求めた「親の権威」とは一体何だったのだろうか。作品の中で一度だけある、家族全員揃っての食事シーン、『竜平』以外は全員既に席に着いているが、先に箸をつけない。『竜平』がビールを取り出し、席に着き、ビールを飲んでコップを置いた時に初めて食事が始まる。果たして今の日本にどれだけ(形式的だとしても)こんなシーンが見られるだろうか。逆にラストシーン前の『貴』以外3人での食事のシーン、『竜平』が家に着く前から『恵』と『健二』は食事をしていて、そこに『竜平』が加わる。果たして、それが「親の権威」の失墜だろうか。それは、恵に言わせた「潰れちゃえ、そんな権威。」と言う事なのだろうとは思うが、今日本にあるこういった形式的な権威を潰したらもっと過ごしやすい生活が出来る世の中が来るのではないだろうか、と思ったのだった。

 『トウキョウソナタ』は映画好きな人が好みそうな作品であった。気持ちが沈んでいる時に観るのはお薦めしないが、色々な人に是非観て頂きたい。



posted by downist at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 − ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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